「大人の社会科見学 松江・東出雲コース」に参加

7月7日、「大人の社会科見学」に参加した。
「モノづくり」の秘密に迫る 松江・東出雲コース。
大人の社会科見学:松江・東出雲コース


今回の見学先は以下の通り。

三菱農機東出雲町
八雲立つ風土記の丘(松江市大庭町)
・出雲かんべの里(松江市大庭町)
・中村茶舗松江市神町
・山本漆器店(松江市末次本町)
・ベルシステム24(松江市北陵町)
・島根産業技術センター(松江市北陵町)

今回がシリーズ最後の「大人の社会科見学」である。

当日は快晴。
松江駅南口を出発して、東出雲へ。
三菱農機では、国道9号線沿いにある工場を見学すると思っていたが、揖屋の工場だった。通常は国道を通っているので、本社があることは看板を見て知っていたが、ここにも工場があることは知らなかった。

会社の概要説明を聞いてから工場へ移動。
まずは金型。金型は10年保管しているそうなので、たくさんの金型が保管されていた。あまりにたくさんあるので、コンピュータで選んだものが自動的に取り出される、どでかいラックに収納されていた。その大きさに驚く。
プレス加工しているところを見て、ラインへ移動。
一つのラインにトラクタとコンバインが流れていた。ラインを進むにしたがってトラクタやコンバインの形になっていく。トラクタや田植え機に比べ、コンバインの部品数は2倍以上。トラクタの作業をしたら、次はコンバインが流れてくるような作業。それぞれの社員さんの作業スキルが相当重要であると感じる。
小さなバインダや管理機が作られているところも見学できた。
繁農期にこれらの機械を使って作業をしている私にとっては機械の構造が少しわかるので、興味深い。
外に出て、塗装を行っている建物の外観を見る。8階建て相当の高さの建物を3階建てにして使用しているそうだ。それだけ塗装に使用している機械が大きいということである。
見学は30分くらいであったがあっという間であった。

三菱農機
http://www.mam.co.jp/index.html


次は、風土記の丘へ。
八雲立つ風土記の丘

風土記の丘に来たのは20年ぶりくらいであろうか。
「見返り鹿」と復元された「竪穴式住居」くらいしか頭に残っていなかったので、どの展示も新鮮な気持ちで見ることができた。もう少し展示を観る時間が欲しかったかなと思うくらいであった。埴輪など、「高度で写実的な表現」を用いて作られており、現在の技術でも作ることができるのか、と思われるものもあるそうだ。

ちょうどこの日、土器を焼くテストが行われていた。夏休みに土器づくりのイベントを企画されており、この予行演習である。
土器焼き実演
http://www.youtube.com/watch?v=tCrBF25JRrg


逆方向からの写真
八雲立つ風土記の丘:土器焼き実演

弥生時代の焼き方を再現し、午前10時半から焼き始めて午後6時ごろに焼きあがる予定とのこと。比較的低温でじわじわ焼く手筈だが、予想していたより天気が良すぎるらしく、土の渇きが早くなって、土器が割れてしまうかもしれないそうだが、どうだったのだろうか。

八雲立つ風土記の丘
http://www.yakumotatu-fudokinooka.jp/


次はすぐ隣の「かんべの里」。
工芸館で籐細工、木工芸、安来織り、陶工芸、和紙手まりの工房にて、作品を見学。
工芸館建物
出雲かんべの里:工芸館

籐細工や安来織り、和紙手まりなどには幾何学的な要素もあるので、興味深かった。
安来織りののれん
出雲かんべの里:安来織り

機織り機
出雲かんべの里:工芸館:機織り機

陶芸作品
出雲かんべの里:工芸館:陶芸作品

和紙手まり
出雲かんべの里:工芸館:和紙てまり

昼食は、工芸館隣りのかんべ茶屋にて、手打ちそばの定食。
とてもヘルシーな定食だったが結構お腹いっぱい。

昼食で一息入れた後は、少し歩いて民話館へ。
出雲かんべの里:民話館

民話館では、囲炉裏がある部屋で、囲炉裏を囲んで『こぶとり爺さん』と『団子と酢和え』という2つのお話を聴く。民話も地方ごとに異なり、島根県版の『こぶとり爺さん』は、一般的なものとは異なっていた。一般的なものは、お隣の爺さんの踊りが下手だったから、こぶを付けられた、という感じだが、聴いたものはお隣の爺さんがより踊りが上手だったので、こぶをもらったということになっていた。民話がどうやって広がっていったのかに興味がでてきた。

出雲かんべの里
http://kanbenosato.com/index.html


さて、今度は松江市内に戻り、中村茶舗へ。
中村茶舗

ひきたての抹茶(中之白)と菓子をいただきながら、中村社長から、お話を聴く。茶道のお話もあり、茶会のお話もあり、とても楽しかった。
茶どころという地域はいくつかあるが、産地という場合と、殿様がお茶好きで、お茶に付随する菓子や料理もおいしくなり、そして文化となっている地という場合の2つのタイプに分けられるとのこと。松江はもちろん後者。
店舗のすぐ奥にある茶室も見せていただいた。
茶室外観
中村茶舗:茶室(中村社長茶室の外で説明中)

茶室内部:奥に釜
中村茶舗:茶室(中村社長、茶室内で説明中)

茶室内部:床の間
中村茶舗:茶室

次は店舗隣りの抹茶工場へ。
電動の石臼が動いていた。ここでは抹茶ができるまでの説明を聞く。植物の特性を生かして、より甘みと香を葉に含まれるように栽培されているそうだ。植物の力はすごい。
茶葉にはカフェイン、カテキン、ビタミンなどが含まれており、茶葉をそのまま摂取する抹茶はとても効率的である。一日一杯を続けることで、健康に良く、美白効果もあるそうである。
中村茶舗は、タイにもお店があるそうだ。中村社長も「伝統産業が国外に出るとは思わなかった」と言われていた。

中村茶舗
http://www.nippon-tea.co.jp/index.html


続いて、すぐ近くの山本漆器店へ。
山本漆器
八雲塗の老舗・山本漆器店

八雲塗についての概要を聴き、まず塗り師の方の仕事場へ行く。水に濡らしたサンドペーパーで製作途中の漆器を磨いておられた。最終的には、掌に油をつけ、磨き粉で塗り面を磨き上げて完成だそうである。
完成までには15工程の手作業が行われ、それぞれの工程も非常に時間がかかるので、根気のいる作業である。
次に絵師の方にお話を聴く。八雲塗は、経年変化によって本来の色が浮かび上がってきて、年々いろ鮮やかになっていくのが特徴である。テーブルにサンプルが置いてあったが、花の絵柄のうち、花びらの一部だけ、本来の色が出てきているようになっていた。これまでであれば、一度にまんべんなく色が出てきてないので、職人のミスとなるという、厳しい規準であった。近年では、以前では行っていなかった手法を考え、文様を油絵のように盛り上げ、研ぎ出す作品も制作され、県内外で高い評価を得ているそうだ。近代の伝統工芸も工夫を加えて進化しているということである。

説明を熱心に聴いていたため、店舗内の商品を十分に観られなかったのが残念。


さて次は、私が今回で一番見たかった、ベルシステム24。
さすがにいろいろな会社のデータを扱っているだけあって、セキュリティが厳しい。
窓越しにコールセンターのフロアを見せていただく。
私が抱いていたコールセンターのイメージは、電話待ちをしているお客さんが何人いるかを表すランプがついていて、ちょっとバタバタしている感じであった。
実際にどのような対応をしているのは分からないが、見てみると、非常に穏やかでスマートに見えた。
ガイドをしていただいた方が言われていたこと。現在のコールセンターの仕事は、クライアントの顔として応対し、クライアントのファンを増やすことである。そして、絆を強める立場である。対応の積み重ねにより、形にはならないが、満足感を作っている、という話だった。
説明会場である会議室には、スローガンなどが掲示されていた。そのなかで、「ヒューマンウェア」という言葉に目が留まった。ここでの仕事は何より、コミュニケーションが必須のスキルである。このコミュニケーション力を使って、クライアントとお客様をヒューマンウェアでつなぐことが、ここでの仕事なのかなと思った。

ベルシステム24
http://www.bell24.co.jp/ja/index.html


最後は、島根産業技術センター。
ここでは大きく4つの新産業を見せていただく。
・ICT技術開発PJ
 ここでは、ジェスチャーカムとGISのシステムを見せていただく。
 ジャスチャーカムは、テレビ画面から離れて、両手を空中で動かし、画面を操作するものである。以前、トムクルーズの映画であったような、空気中で手を動かし、ページをめくったりするような装置である。そのうちの一つを体験させていただいた。しまね海洋館アクアスに設置される予定のシロイルカの調教体験。画面前で手を動かすことによって、対応するマウスポインタが動き、その動きにしたがって、CGのシロイルカバブルリングを見せたりするものである。大人も夢中になりそうである。
 GISは、事前に登録してある地点にジャンプして、そこの付近の地図を表示し、登録してある施設を選択すると施設の詳細情報が表示されるものである。以前の仕事でGISを担当していたのであるが、画面上のデザインやボタンの配置など、やはり目に見えるところが大事だなという感じを強く持った。
・新エネルギー応用製品開発PJ
 ここでは新しいタイプの太陽電池が開発されていた。色素増感太陽電池というもので、昨年のCEATECにも出展されているものであり、高耐久性・シースルー・高意匠性が特徴である。高意匠性というのは、カラーバリエーションや、多様な色彩表現が可能になっているということ。
印刷技術を使って製造できるようになったというのも驚きである。
以前に見学した富士通でも、プリント基板へ半田を載せるのは、印刷技術を使用していた。今後もいろいろな分野で印刷技術が取り入れられてくるだろう。
・熱制御システム開発PJ
 熱の問題というは扱いづらいと思っている。ここでは熱伝導が高い素材を開発し、それを使用して熱を逃がす研究がされていた。
・機能性食品産業化PJ
 県内で生産されている作物で、用途に困っているものを研究し、例えば、体に良い成分が含まれているので、ラットで実験してから、商品化して行こうということをされている。
すでに商品化されている、島根発!の機能性食品としては、次のものがある。

桑製品
柿の葉茶
有機桑の葉専門店 桜江町桑茶生産組合
http://www.kuwakuwa.tv/

カテキンを食べるお茶シリーズ
http://search.kenko.com/product/%E7%9B%8A%E7%94%B0%E8%A3%BD%E8%8C%B6

柿酢
日本海酒蔵(株)

島根のエゴマで絞ったエゴマの油
川本エゴマの会
(株)オーサン
(株)奥出雲中村ファーム

これらの商品は、すでてではないが、以下のサイトでも通信販売で求めることが可能である。

機能性食品(健康食品)のしまテラスWebトップページ(島根県産食品の販売・卸売はこちらで)
http://www.shima-terrace.co.jp/shops/

桑の製品は、過去に養蚕をしていた農家の桑畑が荒れて、何とかならないかと考えて、この葉を利用できないかというのが、事の始まりらしい。また、島根県民にも知られていない、全国での生産量の上位にある作物がある。これらを利用できれば、農業も栄えていくのではないか。身の回りで処理に困っている作物は、実は産業の原石なのかもしれない。

島根産業技術センター
http://www.shimane-iit.jp/


以上で今回の見学は終了。

全5回の「大人の社会科見学」であったが、「あ〜あ、終わっちゃったか」という気持ちになった。

それにしても、今回の「大人の社会科見学」で、さまざま形態のモノづくりを見せていただき、携わっている方の声を直に聴くことができたことは、とても貴重な体験であり、これからの生活でも、役立つものであろう。

企画していただいた、山陰中央新報文化センターさんに感謝である。

山陰中央新報 - 文化センターのご案内
http://www.sanin-chuo.co.jp/modules/tinyd1/index.php?id=1