「たたら満喫モノづくりコース」に参加

6月10日、山陰中央新報社主催の「大人の社会科見学」に参加した。

今回は、

なるほど!しまね学
驚きと感動・・・大人の社会科見学
「モノづくり」の秘密に迫る

特別講座「たたら満喫モノづくりコース」

という名称のコース。
大人の社会科見学 たたら満喫モノづくりコース

見学地は以下の通り。

たたら製鉄の総合博物館・和鋼博物館

・鍛冶職人の技・鍛冶工房「弘光」

・県営布部ダム白椿湖・白椿ハウス(昼食)

金屋子神社(全国1200社を数える「金屋子神社」の総本山。製鉄・冶金関係者が数多く参詣する)

・日刀保たたら(全国で唯一・日本古来の製鉄法で日本刀の材料となる玉鋼を生産)

・国の重要有形民族文化財菅谷たたら・山内「たたら師」たちの集落とカツラの木

・田部土蔵群



当日は快晴。

まず、和鋼博物館で、『炎と玉鋼』という15分ほどの映像をみて、展示品を見ていく。
映像は切符売り場のすぐ後ろにあるホールで観た。和鋼博物館には何度も来ているが、このような立派なホールがあるとは知らなかった。映像のなかで、たたら操業中に唄う「たたら唄」が少しだけ流れた。これは興味深い。ガラスケース内に展示されている『鐡山秘書二』という書物に「たたら唄」のことが書かれているらしい。
たたら操業については、映画『もののけ姫』を観れば概要がわかると思うが、操業は三日三晩行われる。「ふいご」を足で踏んで風を送るのだが、3人交替で、1時間踏んで、2時間休憩というローテーションだったそうだ。「ふいご」を踏む人を「番子(ばんこ)」というが、「かわり番こ」という言葉もここからきたらしい。
わぐりたかし(著)『地団駄は島根で踏め』(光文社新書)という本が出版されているが、このタイトルになっている、地団駄は、たたらの言葉からきているらしい。
和鋼博物館の展示品は250点。
後日、新しい目で、展示品を見たいと思う。


バス移動で、鍛冶工房「弘光」へ。
鍛冶工房弘光 看板

仕事場に入り、真っ赤になった鉄を「カン、カン」と打つ作業を見学させていただいた。
奥の方では、長男さんが、燭台を作っておられた。
ちょうど、この前日、新聞に鍛冶工房弘光に関する記事が出ていた。
新聞記事 鍛冶工房弘光

希望の地へ 〜山陰ふるさと進化論〜 : 第5部「環」若手職人
手仕事の楽しさ継承
http://www.sanin-chuo.co.jp/tokushu/modules/news/article.php?storyid=520139232
伝統ある技術を代々受け継いでいく。
大変ではあると思うが、すばらしいことだと思う。
「鍛冶屋が使う道具を他の鍛冶屋に作ってもらうわけにはいかない。相手にどんな作業をしているか、ばれてしまうから」
このような話を、実演していただいた10代目の小藤さんがしておられた。
このような伝統技術は、代々の創意工夫が蓄積されてできたものである。
貴重な文化であり、観光資源でもあるのだが、みんなに知られるのも困る。
ジレンマである。


昼食は、県営布部ダム白椿湖・白椿ハウスにて。
山菜おこわと野菜の煮物・天ぷらが入った弁当を食べる。
おかずの中でビックリしたのは、干し柿の天ぷら!!
これには、ガイドさんも他の参加者の方も驚いておられたようだ。

昼食後、白椿湖付近で休憩
白椿大橋から布部ダム方向を望む
布部ダム 白椿大橋から布部ダム方向を望む

のびのび泳ぐカメ
http://www.youtube.com/watch?v=E7epFqmq_jM

のびのび泳ぐカメ 続き
http://www.youtube.com/watch?v=13L92UoWgpM


次は、金屋子神社。
宮司の安部さんが説明をしていただけ、また、拝殿にも上がらせていただいた。
金屋子神社

金屋子神社 拝殿

金屋子神社 拝殿の彫り物

金屋子神社 拝殿の彫り物

金屋子神社 本殿と拝殿

神社の横には小川が流れていた。
水の音を聞くと、涼しくなってくる。

金屋子神社の小川
http://www.youtube.com/watch?v=2zht3PQLpEU


さて、次はいよいよ日刀保(にっとうほ)たたら。
日刀保たたら

村下の木原さんにお会いするのを楽しみにしていた。
木原さんからは、渾身の講義を聴かせていただいた。
鉄をつくるということは、すべての産業の基盤となる「モノづくり」である。
基盤がしっかりしていないと、よい産業が育たない。
そのような厳しい現場で、経験と勘を体得され、国選定保存技術保持者に認定された、木原さんの言葉は真っ赤な鉄のように熱かった。
日刀保たたら 木原村下(むらげ)の説明


日刀保たたらを後にし、菅谷たたらへ向かう。
曲がりくねった山道を上って行き、頂上から少し下ったところで、眼下に山内(さんない)の集落が見えてきた。
バスを降り、菅谷たたらまで歩いていく。
途中にカメラスポットがあり、眼下に菅谷たたらとカツラの木が見えた。
ここは、第16回しまね景観賞(平成20年度)で大賞を受賞した場所だそうだ。
菅谷たたらとカツラの木
http://www.pref.shimane.lg.jp/environment/nature/keikan/keikan_sho/keikan16.html#a

道を降りて、菅谷たたらに向かう。
菅谷たたら 高殿

菅谷たたら カツラの木

立派なカツラの木である。
カツラの木は、4月上旬の4日間だけ真っ赤になるそうだ。
この4日間と、たたら操業の三日三晩というのは、関係があるらしい。

そばにはきれいな川が流れていた。
菅谷たたら 川の流れ
http://www.youtube.com/watch?v=IK5tEJgHl-8


この川が風の通り道になっており、たたら操業にはよい環境だそうだ。


最後は、田部土蔵群。
田部家土蔵群

田部家は、日本一の山林王として知られるほど、数多くの山を持っていたそうである。


以上、本当に”満喫”のコースであった。

ただ、今回周ったコース沿いに、まだまだ見学施設などが多くある。
また、菅谷たたらのカツラの木が真っ赤になったときに、再訪したい。
ただし、昨年は、カツラの木が真っ赤になった時には、700人くらいの見物客が訪れたそうだ。700人も来られるというのはありがたいが、非常に小さな集落なので、困る面もあるだろう。


観光客に来て欲しいけれども、あまりたくさん来られては対応に困る。
また一年中だいたい平均して来てもらえるとうれしいが、ある時期にどっと来られるのも困る。

観光の難しさを実感する見学でもあった。